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2020年1月9日

民法改正に伴う賃貸借契約上のポイント その①

2020年4月、民法が大改正を迎えます。実に120年ぶりのようですね。その間、不動産の賃貸借契約については、条文解釈や適用を通じ膨大な判例法理を形成してきましたが、この判例法理やガイドラインの中には現在の条文からは必ずしも簡単に読み取れるものが少なくありません。
今回の改正で条文として明確化されることにより、賃貸不動産の運営上においても賃貸借契約の書類上においても注意しなければならないポイントがあります。

そこで今回は、本改正で賃貸不動産の運営管理に関係する主なポイントのうち、「連帯保証人」について大まかにまとめてみたいと思います。

■ 連帯保証人の保証範囲

 これまでの賃貸借契約における個人連帯保証人の保証範囲は、賃貸借契約に起因する賃借人の債務を包括的に連帯して保証するものでした。しかし、今回の改正で上限額が定められることになり、連帯保証人の債務範囲に上限額のないものは無効となります。したがって、賃貸借契約書には、「連帯保証人は、~(中略)~について賃料等の○ヶ月分を限度に賃借人と連帯して~」のような文言が不可欠になります。尚、この上限額は毎月の家賃元本だけでなく、遅延利息金、違約金等を含めた連帯保証人が負うこととなる一切の金額であり、賃借人の死亡により債務額は確定します。また、この上限額には特段の規制はなく、公序良俗に反するような極めて高額でない限りは、当事者間で自由に定めることができます。賃料等の何ヶ月分が公序良俗に反しないのかについては議論の余地はありそうですが、改正後に起こりうる裁判結果にも留意し対応が必要かと思います。

■ 事業用契約時の財務情報提供

 マンションなどの住居用途の賃貸借については対象ではありませんが、事務所や店舗などの事業用途の賃貸借についても注意が必要です。今回の改正で賃貸借契約締結時点において、賃借人は連帯保証人に対し、財務状況を提供しなければならなくなりました。この財務状況とは、①財産および収支の状況、②他に負担している債務の有無並びにその額及び履行の状況、③担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときはその旨及びその内容 といったものです。契約締結時にこれらの提供がなされなかった場合や、閲覧に供したものが不実であった場合、またオーナー様(賃貸人)において不実を知ることができたと立証された場合は、連帯保証人から保証契約無効を主張される可能性があります。
 さきほどマンション等については対象ではないとは言いましたが、マンション等住居を事務所兼住居として契約する場合も注意が必要です。たとえば、契約者が会社等法人で、連帯保証人が従業員であった場合、会社側が従業員にこれら財務状況を開示するかという問題があります。

■ 連帯保証人への情報提供

 連帯保証人からの請求があった場合、オーナー様(賃貸人)や管理会社は、賃借人の家賃滞納状況(元本や遅延利息金など)、違約金、損害賠償、その他すべてのものについて不履行の有無や債務残額に関する情報を提供しなければなりません。前述の2点ほど賃貸経営上リスクの高い注意点ではないかもしれませんが、情報の開示方法や相手方の本人確認などには一定の注意を払う必要があろうかと思います。

以上 今回は民法改正に伴う賃貸経営の注意点のうち、連帯保証人について大まかなポイントをまとめてみました。当社では今回の改正はもとより賃貸経営上重要な判例にも随時対応し、賃貸借契約書を加筆修正しています。
今回書ききれなかった他のポイントについては、また時間を見つけて更新していきたいと思います。