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2020年1月22日

民法改正に伴う賃貸借契約上のポイント その②

2020年4月、民法が大改正を迎えます。実に120年ぶりのようですね。その間、不動産の賃貸借契約については、条文解釈や適用を通じ膨大な判例法理を形成してきましたが、この判例法理やガイドラインの中には現在の条文からは必ずしも簡単に読み取れるものが少なくありません。
今回の改正で条文として明確化されることにより、賃貸不動産の運営上においても賃貸借契約の書類上においても注意しなければならないポイントがあります。

前回は、民法改正に伴う賃貸不動産の管理運営に関するポイントのうち、連帯保証人についてお話させていただきました。(→前回の記事はコチラ)今回は、その他ポイントについてまとめてみたいと思います。

■ 修繕義務と借主の修繕権

 現行法では、基本的に修繕は賃貸人としての義務で賃借人が修繕できる場合の明記はありませんでしたが、今回の改正で、賃借人の故意過失によって修繕が必要になった場合には、賃貸人に修繕義務は生じないとする規定が改めて明記されることになりました。この点は実務上特段これまでと変わりはないかと思います。
 また、賃借人から修繕が必要である旨の連絡を受けたにも関わらず、相当な期間必要な修繕をしなかった場合や、急迫の事情がある場合には、賃借人が自ら修繕をすることができるとする規定が設けられます。必要な修繕であるか否か、相当な期間とはどのくらいなのか、急迫の事情の客観性などについては賃借人側が主張立証しなければならないとされているので、借主側が一方的に修繕を行うことは想定しにくいですが、管理会社の担当者となかなか連絡が取れない、折り返しの連絡がない、修繕を放置されているといった声も多々耳にすることがあるので、このような場合はトラブルになる可能性があります。

■ 原状回復の範囲と敷金の明確化

 今回の改正で規定される内容は、すでに国交省が示す原状回復ガイドラインや判例等で示された考え方と同じであり、「通常の使用及び収益によって生じた損耗並びに経年劣化を除く」とし、これまでの取り扱いと実質的な変更はありません。ただ、昨今の民法改正関連情報や原状回復Q&Aのようなものを見ていると、「敷金は全額返金が原則」、「原状回復は通常損耗超過分に限る」という言葉だけが一人歩きし、原状回復負担については、最高裁判例で示された要件に従い特約を設定することは可能であるとの認識がなされていない懸念もあり、正確な情報のもとで客観的合理的説明をしていくことが重要になってきます。
 また、敷金についても前述の原状回復と同様に、すでに判例等で確立された考え方であり、改めて定義や条文規定がなされたまででこれまでの運用と実質的な変更点はありません。

■ 一部滅失した場合の賃料

 現行法では、賃借物の一部が滅失等により使用収益できなくなった場合には、当該部分の割合に応じて賃借人が賃料の減額を請求できるとされていましたが、今回の改正で当該部分の割合に応じて賃料が減額されると規定されることになります。つまり、賃借人の請求に基づくことなく当然に減額となります。(ただし、使用収益できなくなった部分の立証責任は賃借人側であると解されています。)当然に減額となる以上、一部滅失等があった際にこれまでと同じ賃料を請求すること自体が不当との非難を受ける可能性があるので、このような事態が発生した場合には、これまで以上に賃借人様との密な連絡はもとより、使用収益できなくなった部分の客観的な判断基準をどのように設けるかもこれからの検討課題かと思われます。


以上 大まかにではありますが、前回と合わせて民法改正に伴う賃貸借契約上のポイントをまとめてみました。契約書類への対応や関係当事者様との折衝など注意すべき点はありますが、きちんと判例法理やガイドラインに則って賃貸経営をされているオーナー様(もしくは委託を受ける管理会社様)にとってはこれまでと実務上あまり影響がない点も多々あるので、「現状が改めて条文に反映されたもの」と捉え、個人的には対応するべきポイントには注意しつつも、あまり構えすぎる必要はないとも思っています。
いずれにせよ、まだまだ議論の余地の多い改正法ですから、これからの動きには注視していきたいと思います。

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